

先生、漢文に「若」が出てきました。これは素直に「わかい」と読めばいいんですよね?

漢文では、その素直さが迷子の入口なんです(笑)。「もし」「ごとし」「しく」「なんじ」のどれかをまず疑いましょう!

一文字なのに四役ですか。若さん、ずいぶん働き者ですね……。

でも見分ける手掛かりはあります。文頭なのか、前に「不」や「莫」があるのか、後ろに何が続くのかを見れば整理できますよ!
【今回の真実】
漢文の「若」は、主に「もし・ごとし・しく・なんじ」と読みます。「若い」と決めつけず、文頭なら仮定、否定語と組めば比較、たとえなら比況、人を指せば二人称という順に確かめましょう。一字だけで決めず、前後の役割を見るのが正解への近道です。
①漢文の「若」の読み方は主に4つ
②文頭の「若」は「もし」と読む
③たとえる「若」は「ごとし」と読む
④「不若・莫若」は「しく」と読む
⑤人を指す「若」は「なんじ」と読む
⑥3手順で判定して例文を解こう
①漢文の「若」の読み方は主に4つ
まず答えからいきましょう!
漢文に出てくる「若」の代表的な読み方と意味は、次の4つです。

テストで「若」の読み方を問われたら、最初にこの4択を頭へ出しましょう。
そこで「わかい」を第一候補にしてしまうと、文全体がうまくつながらなくなります。
日本語では「若い人」と使うので、そう読みたくなる気持ちはよくわかります。
しかし、高校で学ぶ漢文の訓読では、基本的に「わかし」という読み方では考えません。
同じ漢字でも、日本語のいつもの意味をいったん横へ置くことが大切です。
では、4つをどこで見分けるのか、順番に見ていきましょう!
②文頭の「若」は「もし」と読む

「若」が文の初めにあり、後ろに条件とその結果が続くなら、「若し(もし)」と読む可能性が高いです。
意味は「もし~ならば」です。
若人有嬰之者、則必殺人。
若し人之に嬰るる者有らば、則ち必ず人を殺す。
もし人がこれに触れることがあれば、必ずその人を殺す。
この文では、「若」で条件を出し、「則」でその結果を示しています。
英語の「if A, then B」のように、前半と後半がセットになっているわけですね。
文頭の「若」と、後ろの「則・ば」を見つけたら、まず仮定の「もし」を疑いましょう。
ただし、「文頭なら必ずもし」と機械的に決めるのは危険です。
文全体が「条件→結果」になっているかまで確認して、最後の一押しをしてください。
③たとえる「若」は「ごとし」と読む

二つのものを重ねて「~のようだ」とたとえているなら、「若し(ごとし)」と読みます。
これを比況の用法といいます。
君子之交、淡若水。
君子の交はりは、淡きこと水のごとし。
立派な人の交際は、水のようにあっさりしている。
ここでは「君子の交際」と「水」を重ねて、その淡さを説明しています。
「若」の後ろに、たとえに使われる名詞が置かれていないか見てみましょう。
「AはBのようだ」と訳せて意味が自然なら、「ごとし」が有力です。
「若此」の形もよく出ます。
これは「此くの若し(かくのごとし)」と読み、「このようだ」「この通りだ」という意味になります。
④「不若・莫若」は「しく」と読む

「若」の前に「不」や「莫」があれば、比較の「若く(しく)」を疑いましょう。
この「しく」は「匹敵する」「及ぶ」という意味です。
徐公不若君之美也。
徐公は君の美なるに若かざるなり。
徐公は、あなたの美しさには及ばない。
「不若」は「若かず」と読み、「~には及ばない」と訳します。
若だけを見るのではなく、前の「不」までひとかたまりにして見るのがポイントですね。
また、「莫若」の形では「~に若くは莫し」と読み、「~に及ぶものはない」「~が最もよい」という意味を表します。
「不若・莫若」は、前の否定語を目印にして比較の用法だと判断しましょう。
なお、「若かず」と「若くは莫し」は送り仮名まで似ています。
白文だけでなく、授業プリントや教科書の表記も見ながら、文ごと覚えると混乱しにくくなりますよ!
⑤人を指す「若」は「なんじ」と読む

「若」が話しかけられている相手を指す代名詞なら、「若(なんじ)」と読みます。
意味は「お前」「あなた」です。
若亡何也。
若逃ぐるは何ぞや。
お前が逃げるのはなぜか。
この「若」は、何かにたとえているわけでも、仮定の条件を作っているわけでもありません。
「逃げるのは誰か」と考えると、相手を指す「なんじ」だとわかります。
文中で「若」が主語になり、相手の行動や状態を述べているなら、「なんじ」を候補に入れましょう。
このほか「若何」は「いかん」「どのように」、「何若」は「いかん」「どの程度」と読むことがあります。
ここまで一気に広げると混乱する人は、まず4つの基本を固めてから、教科書に出た慣用表現だけ追加すれば十分です。
⑥3手順で判定して例文を解こう

読み方を4つ暗記しても、文の中で選べなければ点数にはなりません。
そこで、迷ったときは次の順で判断しましょう。
●手順1:若の前に「不・莫」があるか見る
●手順2:文頭から条件と結果が続くか見る
●手順3:たとえか、人を指す主語かを確かめる
「否定語→条件→たとえ・人」の順で見ると、手掛かりの強い用法から絞れます。
では、短い確認問題です!
確認問題
次の「若」は、どう読み、どんな意味になるでしょうか。
●知子莫若父
●若人有嬰之者、則必殺人
●君子之交、淡若水
●若亡何也
答えと考え方
●知子莫若父=「子を知るは父に若くは莫し」。莫若なので「しく」で、「父に及ぶものはない」という比較です。
●若人有嬰之者、則必殺人=文頭の若と後ろの則が対応するため、仮定の「もし」です。
●君子之交、淡若水=交際の淡さを水にたとえているため、「ごとし」です。
●若亡何也=逃げる相手を指しているため、「なんじ」です。
同じ文を見直すときも、答えを思い出すだけでは少しもったいないです。
若の前後に線を引き、「莫があるから比較」「文頭で則につながるから仮定」と、根拠を声に出してみましょう。
読み方と根拠をセットにすると、初めて見る文章でも判断しやすくなります。
間違えたときの戻り先
「もし」と「なんじ」で迷ったなら、その若が条件を作っているのか、文の主語なのかを確認します。
「ごとし」と「しく」で迷ったなら、「~のようだ」というたとえか、「~に及ぶ」という優劣の比較かを確かめましょう。
送り仮名だけを丸暗記するより、文の中での仕事を考えるほうが、遠回りに見えて実は早いですよ!
間違えたら答えだけ直さず、「どの手掛かりを見落としたか」を一言書きましょう。
「若を見たら反射的にわかい」と読んでいた人も、もう大丈夫です。
まず4つの候補を出し、前後を見て一つに絞る。
この小さな習慣が、漢文全体を根拠をもって読む力につながりますよ!




●もし=もし~ならば
●ごとし=~のようだ
●しく=~に及ぶ、匹敵する
●なんじ=お前、あなた