

書き下し文で「不」をそのまま書いたら、また直されました。漢字をたくさん書いたのに、むしろ減点ですか?

漢文では、漢字を残すほど立派な答案になるわけではないんだ(笑)。「不」は打消しの助動詞として読むなら「ず」と書こう。

では、ひらがなにする漢字を全部丸暗記します!

一覧は使ってOK!ただし、同じ字でも役割によって書き方が変わる。最後は「この文で何の働きをしているか」を見よう。
【今回の真実】
漢文でひらがなに直すのは、原則として助詞・助動詞の働きをする漢字です。ただ一覧を暗記するだけでなく、漢字で残す用法、書かない置き字、二度読む再読文字まで分けると迷いません。
①ひらがなに直すのは助詞・助動詞
②ひらがなに直す漢字の頻出一覧
③同じ漢字でも役割が違えば書き方が変わる
④置き字と再読文字は分けて考える
⑤3ステップで漢字かひらがなかを決める
⑥例題で確認して覚えよう
①ひらがなに直すのは助詞・助動詞

最初に答えをはっきりさせましょう。
書き下し文では、日本語の助詞・助動詞に当たる漢字をひらがなに直すのが原則です。
たとえば「不知」を「知らず」と書くとき、「知」は動作の中身を表す動詞なので漢字で残します。
一方、「不」は打消しの助動詞「ず」の働きをするため、ひらがなにします。
書き下し文とは、白文を返り点や送り仮名に従い、日本語の語順の漢字かな交じり文へ直したものです。
現代語訳とは違うので、「分かりません」のような現代の言い方へ置き換える必要はありません。
ただし、「この漢字はいつでもひらがな」と一字ずつ固定して覚えるのは危険です。
同じ漢字が、別の文では名詞や動詞として働くこともあるからです。
一覧は入口として使い、最後はその文での役割を確かめる。
これが一番大切な見方です。
②ひらがなに直す漢字の頻出一覧

まずは、定期テストや問題集で見かけやすい字を、助詞と助動詞に分けて確認しましょう。
読み方は文脈や活用によって「ず」が「ざる」になるなど変化します。
助詞としてひらがなにする頻出字
之=の
与=と
自・従・由=より
者=は
耶・邪=や、か
哉・乎=かな、や、か
耳・而已・爾=のみ
「王之道」なら「王の道」、「A与B」なら「AとB」のように、語と語の関係を示します。
ここでの「の」「と」は意味の中心になる語ではないため、ひらがなです。
助動詞としてひらがなにする頻出字
不・弗=ず
可=べし
使・令=しむ
見・被=る、らる
如・若=ごとし
也=なり
「不学」なら「学ばず」、「可行」なら文脈に応じて「行くべし」のように書き下します。
使役の「しむ」、受身の「る・らる」、比況の「ごとし」、断定の「なり」もひらがなです。
最初は「不=ず」のように字と基本形を組み合わせ、その後で活用した形まで声に出すと覚えやすくなります。
この一覧は、どの文章でも同じ読みになるという表ではありません。
次の節で、同じ字の別の顔を見ていきましょう。
一覧が長く見えても、今日一日で全部覚えなくて大丈夫です。
まずは教科書で出会った字に印を付け、実際の文とセットで少しずつ増やしていきましょう。
③同じ漢字でも役割が違えば書き方が変わる

ここが、一覧だけを眺めて終わるとつまずきやすいところです。
たとえば「者」は、主題を示す「は」ならひらがなにします。
しかし、「学ぶ者」のように人や物を表す名詞なら「者」と漢字で残します。
「之」も、助詞の「の」ならひらがなですが、代名詞の「これ」や動詞の「ゆく」と読む場合は、助詞ではありません。
「与」は「と」ならひらがなですが、「あたふ」という動詞なら漢字で残します。
者:は/者(もの)
之:の/之(これ・ゆく)
与:と/与ふ
若:ごとし/若し・若(なんぢ)
見:る・らる/見る
判断基準は、字の名前ではなく、その文で助詞・助動詞として働いているかどうかです。
指導していると、「不はひらがな、者もひらがな」と単語カードだけで覚えた生徒ほど、少し違う用法で手が止まりやすい傾向があります。
反対に、「誰が・何を・どうする」を先に取り、品詞の役割を考える生徒は、初めて見る文にも対応しやすくなります。
迷ったら、前後を含めて日本語に直してみましょう。
「の」「は」「と」「ず」「べし」のような文法の部品になればひらがな、「者」「見る」「与ふ」のように意味の中心になれば漢字、と整理できます。
④置き字と再読文字は分けて考える

漢文には、ひらがなに直す字のほかに「書き下し文へ直接書かない字」と「二度読む字」があります。
ここを同じ箱へ入れないことが大切です。
置き字は書き下し文に直接書かない
而・於・于・乎・兮・焉・矣などは、文中で置き字として使われることがあります。
置き字は、意味や文法上の働きを前後の送り仮名などへ反映させますが、置き字そのものをひらがなに直して書くわけではありません。
ただし、「乎」が疑問・反語の「か・や」になるなど、同じ字を実際に読む用法もあります。
「この字を見たら必ず消す」とは考えず、訓点と句形を確認しましょう。
再読文字は二度目の読みがひらがな
再読文字は一つの字を二度読みます。
一度目は副詞として漢字で書き、二度目は助動詞としてひらがなにするのが基本です。
未だ~ず
将に~んとす
且に~んとす
当に~べし
宜しく~べし
須らく~べし
猶ほ~ごとし
たとえば「未」は「未だ~ず」となり、最初の「未だ」は漢字、二度目の「ず」はひらがなです。
再読文字は「一字を漢字かひらがなのどちらか一方に決める問題」ではありません。
⑤3ステップで漢字かひらがなかを決める
実際の問題では、一覧を思い出すだけでなく、次の順番で処理しましょう。
1.返り点に従い、日本語の語順へ並べる
2.各字が意味の中心か、助詞・助動詞かを見る
3.置き字・再読文字を別枠で確認する

一番よくないのは、白文を見た瞬間に「不を消す」「之をのにする」と、前後を見ずに置換することです。
まず文の骨組みを取り、その後で表記を整えましょう。
たとえば「人不知之」を考えます。
返り点や文脈に従って「人之を知らず」と書き下すなら、最初の「人」と「知」は意味の中心なので漢字です。
「不」は打消しの助動詞なので「ず」、「之」はここでは目的語を表す代名詞なので「之」と残します。
先に文の意味をざっくり取り、最後に漢字・ひらがなの表記を点検するほうが、機械的な置換ミスを減らせます。
答案を書いたら、ひらがなにした字だけを指で追い、「助詞か助動詞と説明できるか」を確認してみてください。
説明できない字があれば、そこが見直す場所です。
⑥例題で確認して覚えよう

最後に短い例で確認します。
答えを見る前に、ひらがなにする字、漢字で残す字、書かない字へ分けてみましょう。
例1「不知」
答えは「知らず」です。
「知」は動詞として漢字で残し、「不」は打消しの助動詞「ず」にします。
例2「王之道」
答えは「王の道」です。
「之」は二つの名詞を結ぶ助詞「の」なので、ひらがなにします。
例3「未見」
文の続きにもよりますが、基本の形は「未だ見ず」です。
「未」は再読文字なので、一度目は「未だ」と漢字で書き、二度目は打消しの「ず」とひらがなにします。
一覧を覚えるときは、字だけでなく「短い書き下し文」までセットにしましょう。
「不・ず」と唱えるだけより、「知らず」と実際の形で覚えたほうが、答案で使える知識になります。
漢文は、ルールが多そうに見えて最初は戸惑います。
でも、ひらがなに直す字、漢字で残す字、書かない置き字、二度読む再読文字の四つに仕分ければ、頭の中はかなりすっきりします。
まずは教科書の書き下し文を一つ選び、助詞・助動詞だけに線を引いてみてください。
丸暗記した一覧を、実際の文の中で使える知識へ変えることが仕上げです。
一問で迷っても、「自分は漢文が苦手だ」と決めつけなくて大丈夫です。
迷った字の役割を一つ説明できるようになれば、次の文章ではちゃんと判断材料が増えていますよ。




意味の中心になる名詞・動詞などは漢字で残す
文と文、語と語をつなぐ助詞はひらがなにする
打消し・推量・使役などを添える助動詞はひらがなにする