

レ点と一二点が同時に出たら、数字がある一二点のほうが強そうです。数字は説得力がありますから!

返り点は選挙ではないので、数字の強さでは決まりません(笑)。

じゃあ、レ点が最優先と覚えておけば大丈夫ですか?

そこも少し注意です。記号の順位を丸暗記するより、上からたどって「今どの字へ返るか」を見るほうが迷わなくなりますよ。
【今回の真実】
漢文のレ点と一二点は、文中のレ点をすべて先に読むという関係ではありません。上から進み、あとで返る字を保留して、戻る合図が来たら読むのが基本です。ただし一点とレ点が合わさる一レ点では、レ点の働きを先に処理します。
①レ点と一二点に固定の優先順位はない

最初に結論です。
漢文のレ点と一二点が同じ文にあるとき、文中のレ点を全部処理してから一二点へ進む、という固定の優先順位では読みません。
基本は、漢字を上から見ていき、レ点や二点によってあとで返る字をいったん保留することです。
下へ進んで返る合図に着いたら、保留した字へ戻ります。
よく「レ点が最優先」と説明されますが、これはレ点が小さな戻りを示すことや、一レ点ではレ点の働きを先に使うことを短く表した言い方です。
文章のどこにあるレ点でも、他の返り点より先に読むという意味ではありません。
たとえば「百聞不レ如二一見一」では、「百・聞・一・見・如・不」の順です。
「一見」の一点から二点の「如」へ返り、そのあとレ点によって「不」へ返ります。
ここでは、一二点のまとまりを処理してからレ点へ返っていますね。
②レ点と一二点の役割を分けよう
優先順位を考える前に、二つの役割を分けるとすっきりします。
レ点はすぐ下の1字から戻る
レ点は、レ点が付いた字をいったん飛ばし、すぐ下の字を読んでから戻る印です。
「読レ書」なら、読む順番は「書→読」で、書き下し文は「書を読む」です。
一二点は離れた場所から戻る
一二点は、二点の付いた字を保留し、一点の付いた字まで読んでから二点へ戻る印です。
「読二漢文一」なら、「漢→文→読」と読みます。
レ点と一二点の違いは強さではなく、主にどれだけ離れた字へ戻るかです。
レ点は隣り合う二字の小さな戻り、一二点は間の字を含む大きめの戻りと考えましょう。

さらに外側へ戻る必要があるときは、上下点や甲乙点が使われます。
ただし、今レ点と一二点で迷っているなら、最初から全部を覚えようとしなくて大丈夫です。
まず二つだけを正確にたどれるようにしたほうが、結果的に早く読めるようになります。
③組み合わせは3手順で読む

レ点と一二点が混ざった文は、次の3手順で読みます。
①いちばん上から、まだ読んでいない字を見ていく
②レ点や二点で「あとで返る字」はいったん飛ばす
③すぐ下の字や一点まで来たら、保留した字へ戻る
先ほどの「百聞不レ如二一見一」で確認しましょう。
「不」にはレ点、「如」には二点、「見」には一点が付いています。
まず「百」「聞」を読み、「不」と「如」は保留して下へ進みます。
次に「一」「見」を読みます。
「見」の一点まで来たので、二点の「如」へ返ります。
さらに「如」の直前にはレ点で保留した「不」があるため、最後に「不」へ返ります。
読む順番は「百→聞→一→見→如→不」です。
迷ったら、返り点を見比べて勝者を決めるのではなく、読んだ字に順番の数字を書いてください。
すでに読んだ字を二度読んでいないか、読まずに残した字がないかも確認できます。
授業で生徒さんを見ていると、返り点の名前を言えるのに読む順番で止まることがあります。
この場合は知識不足というより、目だけで一気に処理しようとしていることが多いです。
最初は指や鉛筆で一字ずつたどるほうが、かえって近道ですよ。
④一レ点はレ点から処理する

ここで、「レ点を先にする」とはっきり言える形も押さえておきましょう。
それが一レ点です。
一レ点は、一点とレ点が同じ字に付いた複合の返り点です。
その字には「下の字からレ点で戻ってくる場所」と、「一点として二点へ戻る出発点」という二つの役割があります。
一レ点では、下の字を読んでレ点の字へ戻り、その字を読んだあと、一点の働きで二点へ返ります。
位置だけを表す練習として、上からA(二点)・B・C(一レ点)・Dと並んでいるとします。
読む順番は「B→D→C→A」です。
Dを読んでレ点の働きでCへ戻り、Cを読んだら一点の働きでAへ返るわけです。
「一とレのどちらから?」と聞かれた場合は、「一レ点ならレ点の働きが先」と答えて大丈夫です。
ただし、この答えを文全体のすべてのレ点と一二点に広げないことが大切です。
⑤優先順位で迷う3つの原因

原因1 レ点を全部先に探してしまう
返り点は、種類別にまとめて処理する記号ではありません。
文章の上から、実際に読む道筋をたどります。
「レ点を発見したらすぐ読む」のではなく、レ点の付いた字は保留し、すぐ下の字を読んでから戻ると動作で覚えましょう。
原因2 一点から読み始めてしまう
一点は文のスタート地点ではありません。
上から進み、二点の字を飛ばした結果として一点へ着き、そこから二点へ返ります。
一点だけを探して、いきなりそこから読み始めないようにしましょう。
原因3 頭の中だけで処理する
最初のうちは、各字の横に①②③と読む順番を書いて構いません。
矢印で返る先を結ぶ方法も有効です。
テストで番号を書くことが目的ではありませんが、練習中に見える形へ直すと、どこで飛ばし間違えたかが分かります。
返り点は暗記だけの単元に見えて、実は手順の単元です。
一字ずつ正しく動けるようになれば、長い漢文でも同じ考え方を使えます。
⑥確認問題で読む順番を固めよう

最後に、漢字の位置をA・B・C・Dで表した問題を解いてみましょう。
意味を訳す問題ではなく、返り点だけに集中する練習です。
問1 A(レ点)・B
問2 A(二点)・B・C(一点)
問3 A(二点)・B・C(一レ点)・D
答えは、問1が「B→A」、問2が「B→C→A」、問3が「B→D→C→A」です。
問3では、Dからレ点でCへ戻り、Cを一点としてAへ返ります。
三問とも正解できたら、学校の教科書からレ点と一二点が混ざった一文を選び、全字に読む順番を書いてみてください。
仕上げの基準は、答えを当てることではなく、「この字を保留し、この字まで来たから戻る」と説明できることです。
間違えた場合も、「漢文は苦手だ」と大きく考える必要はありません。
飛ばす字を間違えたのか、戻る合図を見落としたのか、一レ点の二つの働きが混ざったのかを分ければ、直す場所は小さくなります。
返り点は、ルールが見えた瞬間から急に読みやすくなる分野です。
まずは短い一文に数字を書き、上から一歩ずつたどってみましょう!




返り点の名前だけで先後を決めず、上から進む。あとで返る字を保留し、合図が来たら戻る。