

先生、毎日英語を聞いているのにリスニングが伸びないんです。私の耳、英語だけ自動でミュートしていませんか?

ずいぶん器用な耳だね(笑)。でも、耳の性能より先に確認したいのは、聞き取れなかった場所で何が止まったかなんだ。

止まった場所?とりあえず、もっと長く聞けばいいと思っていました。

語彙で止まっている人と、音で止まっている人と、意味を処理する速さで止まっている人では、必要な練習が違うよ。

では今日は、耳を鍛える会ではなく、原因を捜査する会ですね!
【今回の真実】
リスニングが伸びないときは、聞く時間を増やす前に「知識・音・処理速度」のどこで止まったかを確かめましょう。一つの短い音声とスクリプトがあれば、原因を分けて必要な練習だけを選べます。
①リスニングが伸びない原因は「耳」だけではない

毎日聞いているのに点数が変わらないと、「自分には英語の耳がないのかな」と不安になりますよね。
でも、そこで才能の話にしてしまうのは早いです!
リスニングでは、流れてきた音を単語として区切り、知っている意味と結びつけ、文の内容を前から処理していきます。
さらに、話題や場面から次に来る内容を予想する力も使います。
British Councilの英語教育資料でも、細かな音や単語から理解する処理と、背景知識や文脈から意味を捉える処理の両方が必要だと説明されています。
つまり、結果が同じ「聞き取れなかった」でも、途中で止まった場所は人によって違うのです。
大切なのは、リスニングの量をむやみに増やすことではなく、最初に詰まりの場所を特定することです。
特に中学生・高校生の場合は、学校教材や検定の音声を一度聞いて丸付けし、解説を読んで終わることが多いでしょう。
これでは正解と不正解は分かっても、「なぜ聞けなかったか」が残りません。
答えではなく、聞こえなかった瞬間へ戻る。
ここからが本当のリスニング練習です!
参考:British Council「Listening: Top-down and bottom-up」
②一つの音声で原因を見抜く4手順
新しい教材を買う前に、スクリプトと音声がそろった短い問題を一つ用意してください。
学校の教科書音声、検定の公式問題、模試の復習用音声など、今の目標に近いもので大丈夫です。

①まずは本番と同じように聞く
最初から字幕やスクリプトを出さず、一度だけ聞きます。
問題が付いているなら解き、どこから内容を見失ったかにも印を付けましょう。
全部を書き取る必要はありません。
聞こえた単語、迷った箇所、急に分からなくなった場所が残れば十分です。
②聞こえなかった場所を特定する
「全然分からなかった」で終わらせず、音声の何秒あたりか、スクリプトのどの文かまで絞ります。
一問の失点を、一つか二つの短い箇所まで小さくするイメージですね。
③スクリプトを読んで三つに分ける
●読んでも意味が分からない
●読めば分かるが、音では単語を見つけられない
●音も意味も分かるが、速さについていけない
この三つのどこに当てはまるかを決めます。
British Councilも、誤答したときは本人が何と聞いたかを確認し、スクリプトを見て理由を探る方法を紹介しています。
スクリプトは答えを見るためではなく、聞けなかった原因を検査するために使いましょう。
④直したあと、翌日に再テストする
その場で聞き直すと、英文を覚えていて聞こえたように感じることがあります。
練習後は一度離れ、翌日にスクリプトなしで聞き直しましょう。
同じ箇所を前より楽に処理できたか確かめます。
参考:British Council「Helping learners to listen」
③知識・音・処理速度を原因別に直そう

診断ができたら、ここで初めて練習法を選びます。
全部を一度にやる必要はありません。
一番手前で止まっている所を一つ直せばOKです!
読んでも分からないなら、語彙と文法へ戻る
スクリプトを読んでも意味が取れない文は、何度再生しても理解しにくいものです。
知らなかった単語や熟語を調べ、文の主語と動詞を確認しましょう。
単語はつづりと日本語訳だけでなく、教材の音声を聞いて自分でも発音します。
次に出会ったとき、文字だけでなく音から意味を取り出せる状態を目指します。
読めば分かるなら、音と文字を結び直す
知っている英文なのに聞けなかった場合は、音の問題です。
単語同士がつながった場所、弱くなった音、消えたように聞こえた音へ印を付けます。
音声を短く区切り、スクリプトを見ながらまねして読みましょう。
その後に文字を隠して同じ部分を聞くと、「この音がこの英文だったのか」と結びつきやすくなります。
音も意味も分かるなら、前から処理する
一文ずつなら分かるのに長くなると置いていかれる場合は、処理の速さが課題です。
一語ずつきれいな日本語へ訳そうとせず、意味のかたまりごとに内容を前からつかみます。
短い音声を聞いた直後に、「誰が・何をした」「話し手の結論は何か」を一文で言う練習が使えます。
細部を全部覚えるのではなく、流れを保ったまま要点を残す練習です。
第二言語のリスニング研究でも、聞き取る力は音声語彙の知識だけでなく、単語の認識・文法処理・意味理解を正確かつ速く行う力から捉えられています。
原因が違えば、戻る場所も違います。
語彙不足をシャドーイングだけで押し切ったり、音の問題を単語暗記だけで直そうとしたりしないことが近道です。
参考:Cambridge University Press「The Effect of Learning Context on L2 Listening Development」
④頑張っても伸びにくい練習を見直そう

聞き流しだけで勉強を終える
移動中に英語を流すこと自体が悪いわけではありません。
ただし、それだけでは聞けなかった場所も原因も残らないため、弱点を直す練習にはなりにくいです。
先に机で短い音声を使って診断と練習を行い、その音声を移動中にもう一度聞く。
この順番なら、聞き流しの時間も復習として活かせます。
難しい音声を次々に変える
海外ドラマやニュースを使うと、何となく上級者になった気分は出ます。
ちょっと格好いいですからね(笑)。
しかし、知らない語句が多くてスクリプトも読めないなら、原因が重なりすぎて診断できません。
最初は、スクリプトを読めば内容を理解できる短い音声を選びましょう。
一つの素材で「聞く→原因を分ける→直す→翌日に確かめる」まで終えてから、次へ進みます。
シャドーイングを万能薬にする
シャドーイングは音や速度を練習する選択肢の一つですが、英文の意味を理解しないまま追いかけるだけでは、語彙や文法の穴が残ります。
口が動いたことと、内容を理解できたことは分けて考えましょう。
方法の名前から選ぶのではなく、自分の原因から練習を選ぶことが大切です。
⑤7日間で勉強法を立て直そう

最後に、何から始めるか迷う人へ、一週間の進め方を示します。
これは魔法の七日間ではなく、今後の練習を正しい方向へ向けるための点検期間です。
1日目:短い音声を一つ選び、4手順で診断する
2日目:分からなかった語彙と文法を直す
3日目:聞けなかった音を区切ってまねする
4日目:意味のかたまりごとに前から理解する
5日目:同じ問題をスクリプトなしで解く
6日目:似た難度の新しい音声で診断する
7日目:最初と新しい音声の記録を比べる
記録するのは勉強時間だけではありません。
●読んでも意味が分からなかった箇所の数
●読めば分かるのに聞けなかった箇所の数
●途中で内容を見失った箇所
●問題の正答数
この四つを簡単に残すと、点数がすぐ動かなくても、どこが改善したか見えます。
「前は読んでも分からなかったが、今は音だけが課題」のように、詰まりが一段先へ進むことも立派な成長です。
リスニングが伸びないと感じたら、勉強をやめる合図ではなく、やり方を診断する合図にしましょう。
一つの音声を丁寧に直せたら、同じ手順を次の音声でも繰り返します。
聞き取れない自分を責める必要はありません。
原因が見つかったなら、もう「何をすればいいか分からない状態」からは抜け出せていますよ!




①スクリプトを見ずに一度聞く
②聞こえなかった箇所を時刻や文の位置で示す
③スクリプトを読み、止まった理由を分類する
④原因に合う練習をして、翌日にもう一度聞く