

浪人して成績が上がるのは2割だけ、と見ました。私はもう残り8割の席に案内されているのでしょうか……。

まだ受付すら始まっていないのに、勝手に指定席へ座らなくて大丈夫(笑)。その2割には、全国統一の確かな根拠が見当たらないんだ。

では、浪人すればみんな伸びるということですか?

それも違うよ。割合を当てにするより、何を変えれば伸びるのか、同じ物差しで確かめられる状態を作ることが大切なんだ。
【今回の真実】
浪人で成績が上がる割合を示す全国統一の確かな統計は、確認できませんでした。「2割」だけで進路や自分の限界を決めず、同じ模試の偏差値・志望校換算点・取り返せる失点の3指標で、自分の伸びを確かめましょう。
①浪人で成績が上がる割合は全国一律に出せない
②2割と80.5%が並ぶのは測り方が違うから
③成績が上がったかは3つの指標で測る
④比較条件を固定して自分の伸びを確かめる
⑤数字が動かないときは一問単位まで下りる
⑥割合より自分の改善を一周させよう
①浪人で成績が上がる割合は全国一律に出せない

先に結論からお伝えします。
浪人で成績が上がる人の割合を、全国共通の確定値として示すことはできません。
文部科学省の学校基本調査では進学率などは分かりますが、浪人生一人ひとりの模試成績を現役時から追った数字ではありません。
実際、確認できた公開資料の範囲でも、全国の浪人生を同じ条件で追跡し、「上がった・維持・下がった」に分けた統計の出典は見つかりませんでした。
ネットでよく見かけるのは「上がる2割・維持6割・下がる2割」という数字ですが、上位の塾記事も「正式なデータはない」「根拠となるデータはない」と明記しています。
ですから、2割を「自分が伸びる確率」と受け取るのは早いです。
根拠の確かでない厳しい数字だけで、自分の一年を先に決めつける必要はありません。
2割説は注意を促す経験則として参考にしても、進路を決める統計としては使わない。
これが、数字とのちょうどよい距離感です。
②2割と80.5%が並ぶのは測り方が違うから

では、なぜ検索すると大きく違う数字が出てくるのでしょうか。
理由は、調査ごとに「誰を」「何で」「いつと比べたか」が違うからです。
たとえば、浪人経験者を対象にした塾のWebアンケートでは、「現役時代より成績が5%以上上がった」が80.5%、「第一志望に合格した」が29.3%でした。
調査した記事自身も、浪人経験者だけが回答したため偏りがあり得ると断っています。
これは矛盾ではありません。
成績は上がったけれど、第一志望の合格点までは届かなかった人もいるからです。
偏差値は受験者集団によっても変わります。
現役時の校内模試と浪人後の全国模試を並べても、同じ物差しとは限りません。
割合を読むときは、数字の大きさより先に「成績の定義・対象者・比較時点」を確認しましょう。
③成績が上がったかは3つの指標で測る
「成績」という一語には、得点、偏差値、判定などが混ざっています。
ここを分けないと、英語の力は付いたのに偏差値だけを見て落ち込んだり、判定が上がったのに合格までの不足点を見落としたりします。
見る数字は、①同じ主催・同じ種類の模試の偏差値、②志望校の配点に直した得点、③次なら正解に変えられる失点の三つです。

①同じ模試の偏差値
偏差値は、自分が受験者集団のどこにいるかを見る数字です。
現役時の校内模試と浪人後の全国模試では受験者集団が違うため、できるだけ同じ主催・同じ種類の模試で推移を見ます。
②志望校の配点に直した得点
合否へ近づいたかを見るには、志望校で使う科目と配点へ直す必要があります。
総合偏差値が上がっても、配点の大きい英語が止まっていれば、志望校までの距離はあまり縮んでいないかもしれません。
③次なら正解に変えられる失点
これは未来の得点候補です。
知識を一つ覚えれば取れる問題、途中まで方針が合っていた問題、時間があれば解けた問題へ印を付けます。
河合塾の全統模試の成績表にも、得点・偏差値・順位に加えて、設問別成績や過去回の成績推移が用意されています。
判定だけで閉じず、この三つを一緒に見ると、伸びの中身が分かります。
④比較条件を固定して自分の伸びを確かめる

浪人を始めたら、「なんとなく前より解ける」だけで判断しないことも大切です。
一方で、模試一回の偏差値だけで落ち込む必要もありません。
おすすめは、浪人開始時に比較の基準を一枚へ残すことです。
●模試名、受験回、科目をそろえる
●志望校と入試方式を固定して換算する
●教材名、単元、初回正解、解き直し正解を記録する
模試は範囲や受験者が変わるため、短期間では数字が上下します。
また、大学入試センターの公表値を見ると、共通テストの科目平均点は年度によって動いています。
そのため、年度の違う素点だけで「伸びた・下がった」と決めず、模試の偏差値、同じ年度の過去問演習、答案の中身を一緒に見ます。
月ごとの結果より、「決めた範囲を学ぶ→テストする→間違いを直す→もう一度解く」の一周が毎週できているかを先に確認してください。
この一周が回っているのに模試が一度下がったなら、すぐに「浪人しても伸びない」とは言えません。
反対に、机には長く向かっていても、授業を受けっぱなしで確認テストがないなら、勉強の形を変える必要があります。
⑤数字が動かないときは一問単位まで下りる

成績が横ばいのとき、「もっと頑張る」だけでは修正になりません。
模試の判定から教科へ、教科から大問へ、大問から一問へと下りていきましょう。
間違いは、次の三つに分けると扱いやすくなります。
●知識を知らなかった
●解き方は知っていたが、自力で再現できなかった
●時間配分や読み違いで、取れる問題を落とした
知識不足なら該当範囲へ戻ります。
再現不足なら、解説を閉じて白紙から解き直します。
実戦上のミスなら、制限時間と解く順番を決めて再テストします。
最初に直すべきなのは、一番難しい問題ではなく、次なら正解へ変えられそうな問題です。
これを毎週続けると、「成績が上がる側に入れるだろうか」という大きすぎる不安が、「今週はこの三問を取れるようにする」という行動へ変わります。
割合は自分で動かせませんが、次の一問は動かせます。
⑥割合より自分の改善を一周させよう

浪人で成績が上がる割合について、確かな全国統計は確認できませんでした。
2割説も、80.5%という民間アンケートも、対象と定義が違うため、あなた個人の結果を予言する数字ではありません。
だからといって、何も判断できないわけではないんです。
●現役時代の敗因を具体化する
●志望校との差を得点で見る
●一週間の勉強を決める
●答案から次の一問を直す
浪人で伸びる見込みは、誰かが出した割合より、この改善を続けられる環境があるかで判断してください。
不安があるのは、浪人という一年を真剣に考えている証拠です。
今の時点で4項目がそろっていなくても、これから整えれば大丈夫です。
数字に怖がらされて結論を急がず、まず直近の模試や入試答案を一枚広げて、「次なら取れる一問」を選ぶところから始めましょう!




●成績とは、得点・偏差値・判定・第一志望合格のどれか
●対象は、全国の浪人生・塾生・アンケート回答者のどれか
●比較は、現役時の本番・春の模試・秋の模試のどれか