

「返読文字」を調べたら「再読文字」も出てきました。一字違いなら、だいたい同じですよね?

漢文では、その一字がかなり大仕事をしています(笑)。返読文字は下から返って一度読み、再読文字は一字を二度読むものです。

では、名前よりも「何回読むか」を見ればよいのですね。

その通りです。さらに、返読文字は字の一覧だけでなく、文中での働きまで見ると迷いにくくなりますよ。
【今回の真実】
返読文字は、下の語を先に読んでから上へ返って読む字です。ただし、字だけで返読を決めるのではなく、否定・使役・受身など、その文での働きを下の語とセットで確かめることが大切です。
①漢文の返読文字とは?

返読文字(へんどくもじ)とは、漢文を訓読するとき、下にある語を先に読んでから上へ返って読む字のことです。
たとえば「不レ知」なら、上からそのまま「不、知」とは読みません。
「知」を先に読み、「不」へ返って「知らず」とします。
返読文字を見つけると、どこで下から上へ戻るかを予想しやすくなります。
そのため、訓点付きの漢文を読むときだけでなく、白文に返り点を付ける問題でも手がかりになります。
ただし、「この漢字が出たら、いつでも必ず返る」と字の形だけで決めるのは危険です。
同じ字でも、文中での働きによって読み方が変わることがあるからです。
字と、その直後にある語との関係を一組で見るのが基本です。
②返読文字を5分類で整理

返読文字は、長い一覧を一列に暗記するより、働きで分けると覚えやすくなります。
高校漢文で出会いやすい代表例を、次の5分類で整理してみましょう。
| 分類 | 代表的な字 | 主な読み |
|---|---|---|
| 動詞 | 有・能・欲 | あり・あたふ・ほつす |
| 形容詞 | 無・莫・難・易・多・少 | なし・なかれ・かたし・やすし・おほし・すくなし |
| 助動詞 | 不・可・如・若・見・被・使・令 | ず・べし・ごとし・る/らる・しむ |
| 助詞 | 自・従・由・与・毎 | より・と・ごとに |
| その他 | 非・所・雖・所以 | あらず・ところ・いへども・ゆゑん |
この表は「代表例」です。
教材によって載せる字や分類の仕方が少し異なるため、個数を競うように全部覚える必要はありません。
まずは、定期テストや教科書で出てきた字を優先しましょう。
最初に固めたいのは、不・可・如・使・見のように、否定・可能・比況・使役・受身を作る字です。
そして「不=ず」と一語だけで覚えず、「不+動詞なら、動詞を読んでから『ず』へ返る」のように覚えます。
返読文字は、読みと意味だけでなく「下の何を受けるか」までセットにしましょう。
分類する理由は、ただ暗記の箱を作るためではありません。
「不」なら下の動作を打ち消し、「使」なら人に下の動作をさせ、「如」なら下の名詞と比べるというように、返った後の意味が変わるからです。
同じように下から上へ戻っても、文の中で担当している仕事はずいぶん違います。
ここが分かると、返り点の順序だけ合っているのに現代語訳が不自然になる、というミスも減らせます。
③返読文字を読む3ステップ

返読文字を含む短文は、次の3ステップで処理すると安定します。
ステップ1 返読文字と働きを見つける
まず、不・可・如・使などに印を付けます。
この段階では訳を急がず、「否定かな」「使役かな」と働きの候補を考えれば十分です。
ステップ2 下の語を先に読む
返り点に従って、返読文字はいったん保留します。
「不レ知」なら「知」、「可レ学」なら「学」を先に読みます。
ステップ3 返って日本語の形につなぐ
最後に返読文字へ戻り、「知らず」「学ぶべし」のように、日本語としてつながる形にします。
見つける、下を読む、返ってつなぐ。この順序を声に出せると、勘に頼らず読めます。
練習するときは、最初からきれいな書き下し文を一気に作ろうとしなくて大丈夫です。
まず原文の字に読む順番を小さく振り、その次に声に出し、最後に書き下し文へ直しましょう。
どの段階で止まったかが見えるので、「返り点が苦手なのか、返読文字の意味が曖昧なのか」が自分でも分かります。
「使二民耕一」は字が増えますが、やることは同じです。
使役される「民」と実際の動作「耕す」を確認し、最後に「使」へ返って「しむ」と結びます。
返り方が複雑なときほど、誰が動き、誰に何をさせるのかを先に整理しましょう。
④再読文字・返り点との違い

「返読文字」「再読文字」「返り点」は名前が似ていますが、役割は別です。
| 用語 | 何を表すか | 読む回数 |
|---|---|---|
| 返読文字 | 下の語を先に読み、上へ返って読む字 | 基本的に一度 |
| 再読文字 | 一字を二度に分けて読む字 | 二度 |
| 返り点 | 読む順序を示すレ点・一二点などの記号 | 文字ではない |
たとえば「未」は、「未だ」と一度読み、下の動詞を読んだあとに「ず」ともう一度読みます。
これが再読文字です。
一方、「不レ知」の「不」は、先に「知」を読んでから「ず」と一度だけ読むので返読文字です。
一度だけ下から返るのが返読文字、一字を二度読むのが再読文字です。
また、返り点は読む道順を示す記号であり、返読文字そのものではありません。
テストでは「字の種類」「読む回数」「順序を示す記号」の三つを分けて考えましょう。
⑤よくある3つの間違い

1 字を見ただけで返読と決める
返読文字の候補を覚えることは役立ちますが、同じ字がいつも同じ働きをするとは限りません。
下に動詞があるのか、名詞との関係はどうなっているのか、前後の意味は通るのかを確認します。
2 読む順序と書き下しの表記を混ぜる
順序が合っていても、書き下し文の表記で失点することがあります。
助動詞として働く「不」「可」「如」「使」などは、書き下し文では「ず」「べし」「ごとし」「しむ」と、ひらがなで書くのが基本です。
一方、「有り」「無し」のように、用言として漢字を残すものもあります。
読む順番が合ったら、次に「漢字を残すか、ひらがなにするか」を別に点検しましょう。
3 一覧を眺めただけで終える
指導していると、返読文字を覚えたのに問題で使えない生徒は、字の意味だけを覚えていることが多いです。
短文の中で、どの語を先に読み、どこへ戻るのかまで説明して初めて使える知識になります。
「不はず」ではなく、「下の動詞を先に読み、不へ返ってず」と言える状態を目指してください。
⑥短文で使える知識にしよう

返読文字は、一覧を一気に暗記するより、教科書の短文を一つずつ使うほうが身につきます。
おすすめは、次の順で一文を往復する練習です。
●返読文字に丸を付ける
●先に読む語へ矢印を引く
●読む順序を声に出す
●書き下し文にする
●現代語訳が自然か確かめる
間違えたときは、「字を知らなかった」「返る相手を間違えた」「ひらがなに直せなかった」のどこで止まったかを分けましょう。
全部を最初から覚え直すより、戻る場所がはっきりします。
返読文字の完成基準は、一覧を言えることではなく、初めて見る短文で返る理由を説明できることです。
まずは教科書から、不・可・如を含む短文を一つずつ探してみてください。
一文ごとに「下を先に読む理由」が見えるようになると、返り点の問題も書き下し文も、ぐっと整理しやすくなりますよ。
返読文字は暗記項目というより、日本語の語順へ組み替えるための目印として使いましょう。




不レ知 → 知らず
可レ学 → 学ぶべし
如レ夢 → 夢のごとし
使二民耕一 → 民をして耕さしむ