

先生、「使」が出たら使役!までは覚えました。でも書き下そうとすると、誰が誰を使っているのか迷子になります……。

漢文の中で人間関係まで迷子になったか(笑)。でも大丈夫。「誰が・誰に・何をさせるか」の3役に分ければ整理できるよ。

「をして」と「しむ」を丸暗記するだけではダメなんですね。

そういうこと!型を覚えたら、実際に動く人を見つける。今日は例文で、書き下しと現代語訳まで一緒に仕上げよう!
【今回の真実】
漢文の使役は「をして〜(せ)しむ」だけを暗記するより、文全体の主語・実際に動く人・その動作の3役に分けると読みやすくなります。最後は「誰が誰に何をさせるのか」という日本語に戻して確認しましょう。
①漢文の使役は「AをしてB(せ)しむ」
②誰が・誰に・何をさせるかの3段階で読む
③使・令・教・遣の見分け方
④例文で書き下しと現代語訳を確認
⑤使役で間違えやすい3つのポイント
⑥使役を得点に変える10分練習
①漢文の使役は「AをしてB(せ)しむ」

まず結論からいきましょう!
漢文の使役は、基本的に「AをしてB(せ)しむ」と書き下し、「AにBさせる」と訳します。
ここでAに入るのは、実際にその動作をする人やものです。
Bには、Aがさせられる動作が入ります。
たとえば「使弟読書」なら、弟が実際に行う動作は「読書」です。
そのため「弟をして書を読ましむ」と書き下し、「弟に本を読ませる」と訳します。
大事なのは、「使=しむ」と一字だけ覚えて終わらないことです。
「誰をして」と「何をせしむ」が一組になって、初めて使役の形になります。
書き下し文では、使役の助動詞「しむ」はひらがなで書きます。
「使む」のように漢字を残さないよう注意しましょう。
②誰が・誰に・何をさせるかの3段階で読む

使役を見つけたら、いきなり書き下し文を完成させようとしなくて大丈夫です。
まず文の登場人物と動作を、次の3役に分けます。
●文全体の主語:させる人
●使役の対象:実際に動く人
●動作:その人がすること
この3役に分ければ、使役はかなり読みやすくなります。
「我使弟運鞄」を見てみましょう。
文全体の主語は「我」、実際に運ぶ人は「弟」、動作は「鞄を運ぶ」です。
この関係を日本語に直すと、「私は弟に鞄を運ばせる」ですね。
そこで書き下し文は、「我、弟をして鞄を運ばしむ」となります。
佐賀県教育センターの高校国語の授業研究でも、この例を使い、漢文では「使」の後に実際に動く人、その後に動作内容が置かれると説明しています。
日本語では動作の「運ばせる」が最後に来るため、漢文の字順だけを追うと混乱しやすいのです。
指導をしていても、「しむ」は覚えているのに、誰が鞄を運ぶのかが曖昧なままの生徒さんはいます。
そんなときは訳を書き始める前に、動く人へ丸、動作へ線を付けるだけでも整理しやすくなりますよ!
③使・令・教・遣の見分け方

使役の目印としてまず覚えたい字は、使・令・教・遣です。
使と令は、「AをしてB(せ)しむ」という基本形でよく登場します。
教は「教へて〜しむ」、遣は「遣はして〜しむ」と、その字が持つ「教える」「派遣する」という意味を残して読む場合があります。
ただし、これらの字を見たら毎回自動的に使役、と決めつけるのは危険です。
「使」は「つかう・つかわす」、「令」は「命令する」という動詞として読まれることもあります。
次の語まで見て、「人やものに何かをさせる関係」ができているかを確認しましょう。
さらに、使や令が書かれていなくても、文脈によって動詞を使役に読む場合があります。
だからこそ最後は、目印の字だけではなく、「誰が誰に何をさせる文なのか」で確かめる必要があるのです。
1.使・令・教・遣などの目印を探す
2.その後に「動く人+動作」が続くか見る
3.前後の内容に「〜させる」が合うか確かめる
④例文で書き下しと現代語訳を確認

ここからは、実際の形で確認しましょう。
例文1「天帝使我長百獣」
まず、させる側は「天帝」です。
実際にある状態になるのは「我」で、何になるのかというと「百獣の長」です。
書き下し文は「天帝、我をして百獣に長たらしむ」。
現代語訳は「天帝は私をすべての獣の長にさせた」です。
「長」はここでは「長い」ではなく、「かしら」という意味で捉えます。
例文2「我使弟運鞄」
させる側は「我」、実際に運ぶのは「弟」、運ぶものは「鞄」です。
書き下し文は「我、弟をして鞄を運ばしむ」。
現代語訳は「私は弟に鞄を運ばせる」となります。
白文→3役の確認→書き下し文→現代語訳の順に進めると、ただ答えを眺めるより使役の仕組みが残ります。
同じ例文を逆向きにも練習してみましょう。
「私は弟に鞄を運ばせる」という訳を見て、「弟をして鞄を運ばしむ」を再現できれば、かなり理解が深まっています!
⑤使役で間違えやすい3つのポイント
「をして」を落とす
使役の対象Aを、普通の目的語のように「Aを」とだけ書かないようにしましょう。
基本形では「Aをして」までがセットです。
動詞を未然形にしない
「読む+しむ」ではなく「読ま+しむ」、「運ぶ+しむ」ではなく「運ば+しむ」です。
動詞の形まで答案に書けて、使役の書き下しが完成します。
受身とごちゃごちゃになる
使役は、主語がほかの人に動作を「させる」形です。
受身は、主語がほかの人から動作を「される」形です。
矢印で考えるなら、使役は主語から相手へ、受身は相手から主語へ動作が向かいます。

「見・被・為A所B」など受身の目印と混ざったときも、最後は誰が実際に動くのかを確認してください。
目印だけを暗記するより、人物関係を一文で言えるほうが誤訳を防げます。
⑥使役を得点に変える10分練習

文部科学省の学習指導要領解説でも、漢文の訓読のきまりには返り点や送り仮名などが含まれ、読む学習に即して扱うものとされています。
つまり、一覧を眺め続けるより、短い文を実際に読む練習へつなげることが大切です。
おすすめは、次の10分練習です。
●2分:教科書や学校の問題集から使役文を2つ選ぶ
●2分:させる人・動く人・動作に印を付ける
●3分:何も見ずに書き下し文を書く
●2分:「誰が誰に何をさせる」と現代語訳する
●1分:間違いを「をして・未然形・しむ・人物関係」に分ける
完成の基準は、使役の字を言えることではなく、初めて見る短文でも3役を示して訳せることです。
学校のテスト範囲が決まっているなら、まずは教科書と授業プリントの例文を使ってください。
同じ文を翌日にもう一度、今度は答えを隠して解くと、覚えたつもりも見つけられます。
使役は、最初こそ「をして」「しむ」の位置で混乱しやすい句法です。
でも、文の中にいる3役を見つければ、急に見通しがよくなります。
「誰が・誰に・何をさせるのか」。
この一問を自分に投げかけながら、短い例文から確実に読めるようにしていきましょう!
一度に全部の形を覚えなくても大丈夫です。
まずは教科書に出てきた一文を、自分の力で説明できるところから始めてくださいね。




使・令+A+B
書き下し:AをしてB(せ)しむ
現代語訳:AにBさせる