

狐が前を歩いただけで、みんな逃げたんですよね。私も廊下を歩けば、道が開く日が来るでしょうか。

後ろに虎がいなければ、たぶん普通の登校風景ですね(笑)。この話は「誰が、誰を恐れたか」を分けると、一気に読みやすくなります。

狐・虎・獣の3者ですね。現代語訳を丸ごと覚えるより整理できそうです。

その通りです。まず話の流れをつかみ、それから句法と原典のたとえを結びましょう。
【今回の真実】
「虎の威を借る狐」は、狐・虎・獣の見方を分ければ迷いません。狐は虎の力を利用し、獣は虎を恐れ、虎だけが「狐を恐れた」と勘違いします。このずれが、現代語訳・句法・記述問題をつなぐ中心です。
①「虎の威を借る狐」の意味とあらすじ

「虎の威を借る狐」は、力のない者が、権力のある者の威勢を借りて威張ることのたとえです。
出典は『戦国策』の楚策です。
虎に捕まった狐は、「天帝が私を百獣の長にした」と言って、食べられないように話を組み立てます。
そして、自分が先に歩き、虎を後ろからついて来させました。
ほかの獣たちは一斉に逃げますが、恐れていた相手は狐ではなく虎です。
ところが虎は、獣たちが狐を恐れて逃げたのだと思い込みます。
つまり、狐は虎の力を利用し、虎はその利用に気づかなかったという話です。
現代のことわざは「後ろ盾の力で威張る人」を指しますが、本文を読むときは、狐が危機を切り抜けるために虎の勘違いを利用した話として押さえましょう。
②白文・書き下し文・現代語訳

教科書では、狐と虎の寓話部分が「借虎威」などの題で掲載されることがあります。
句読点、送り仮名、漢字の新旧字体には教材ごとの差があるため、定期テストでは学校の教科書とプリントを優先してください。
白文
書き下し文
虎、百獣を求めて之を食らひ、狐を得たり。狐曰はく、「子敢へて我を食らふこと無かれ。天帝、我をして百獣に長たらしむ。今、子我を食らはば、是れ天帝の命に逆らふなり。子我を以て信ならずと為さば、吾子の為に先行せん。子我が後に随ひて観よ。百獣の我を見て、敢へて走らざらんや。」と。虎、以て然りと為す。故に遂に之と行く。獣之を見て皆走る。虎、獣の己を畏れて走るを知らざるなり。以て狐を畏ると為すなり。
現代語訳
虎は多くの獣を探し求めて食べており、狐を捕まえました。
狐は「あなたは決して私を食べてはいけません。天帝が私を獣たちの長にしたのです。もし私を食べれば、天帝の命令に逆らうことになります」と言います。
さらに「信用できないなら、私が先に歩きましょう。私の後ろについて、獣たちが私を見ても逃げないことがあるか、見てください。いや、必ず逃げます」と続けました。
虎はその言葉をもっともだと思い、狐と一緒に歩きます。
獣たちはそれを見て、みな逃げました。
しかし虎は、獣たちが自分を恐れて逃げたことを知らず、狐を恐れたのだと思ったのです。
訳の中心は、獣が実際に恐れた相手と、虎が恐れられたと思った相手の違いです。
③狐・虎・獣の3者に分けて読む
この本文は、登場する3者の情報を混ぜると急に分かりにくくなります。
●狐:虎に食べられないため、虎を後ろに連れて歩く
●虎:獣が狐を恐れて逃げたと思い込む
●獣:実際には狐の後ろにいる虎を恐れて逃げる

「狐の計画」「虎の思い込み」「獣の本当の理由」を別々にするのが、最も大切な読み方です。
指導していると、現代語訳を一生懸命覚えたのに、「誰が誰を恐れたのか」という説明問題で主語が入れ替わる生徒さんがいます。
これは理解力の問題というより、3者を同じ箱に入れて覚えているのが原因です。
本文の「己」は虎自身を指すため、「獣の己を畏れて走る」は、獣が虎を恐れて逃げるという意味になります。
一方、最後の「以為畏狐也」は、虎が「獣は狐を恐れた」と考えた部分です。
この2文を並べ、事実は虎、勘違いは狐と短くメモすると、内容問題の軸がぶれません。
④テストで押さえたい句法と語句

全文をただ暗記するより、本文の目印と訳を一組にすると得点につながります。
無敢~:禁止
「子無敢食我也」は、「子敢へて我を食らふこと無かれ」と読みます。
「決して私を食べてはいけない」という禁止です。
使A B:使役
「天帝使我長百獣」は、「天帝、我をして百獣に長たらしむ」です。
AをしてBせしむ、つまり「AにBさせる」という使役を確認しましょう。
敢不~乎:反語
「敢へて走らざらんや」は、「どうして逃げないことがあろうか、いや、必ず逃げる」と訳します。
疑問の形のまま終わらせず、反対側の内容まで書くのがポイントです。
以A為B:AをBと思う
「子以我為不信」は、「あなたが私を信用できないと思うなら」という意味です。
「虎以為然」では、何をもっともだと思ったのかが省かれているため、文脈から「狐の言葉」を補います。
さらに「走」は、ここでは走る速さの話ではなく「逃げる」という意味です。
句法4つに加え、「走=逃げる」「己=虎自身」をセットで確認しておきましょう。
⑤原典では何をたとえた話なのか

教科書では寓話だけを読むことがありますが、原典には前後の政治的な会話があります。
楚の宣王が、北方の国々は昭奚恤を恐れていると聞いたが、本当なのかと家臣たちに尋ねました。
そこで江乙が、虎と狐の話を使って説明します。
●虎:楚王の軍事力
●狐:昭奚恤
●獣たち:北方の国々

江乙の説明は、北方の国々が本当に恐れているのは昭奚恤個人ではなく、その背後にある王の軍事力だというものでした。
この背景を知ると、単なる動物の知恵比べではなく、借りた権威が大きく見える仕組みを説明した寓話だと分かります。
なお、「借虎威」は学校教材などで寓話部分に付けられる題で、原典では「荊宣王問群臣」の一節です。
テスト範囲が寓話部分だけなら、政治背景の固有名詞を全部暗記する必要はありません。
ただし、虎・狐・獣が原典で何に対応するかは、故事成語の由来を説明する問題に備えて押さえておくと安心です。
⑥白紙1枚でできるテスト対策

最後は、教科書を眺めるだけでなく、自分で再現できるかを確かめましょう。
白紙を4つに区切り、次の内容を書きます。
●狐・虎・獣の3者の見方
●無敢・使・敢不~乎・以A為Bの読みと訳
●虎の勘違いを説明する2文
●ことわざの意味と原典の対応関係
記述問題では、「獣たちはなぜ逃げたのか」と「虎はなぜ狐を恐れたと思ったのか」を分けて答えてください。
前者は「狐の後ろにいる虎を恐れたから」、後者は「獣が逃げた本当の理由に気づかなかったから」です。
答え合わせでは、主語・恐れた相手・理由の3点に丸を付けると、曖昧な答案を見つけやすくなります。
止まった場所が句法なら④へ、人物関係なら③へ、故事の由来なら⑤へ戻れば大丈夫です。
全部を最初からやり直す必要はありません。
「虎の威を借る狐」は短い本文ですが、事実と思い込みを分けて読む練習にぴったりです。
狐・虎・獣の3者を分けて説明できれば、現代語訳から記述問題まで一本につながります。




虎求百獣而食之、得狐。狐曰、「子無敢食我也。天帝使我長百獣。今、子食我、是逆天帝命也。子以我為不信、吾為子先行。子随我後観。百獣之見我、而敢不走乎。」虎以為然。故遂与之行。獣見之皆走。虎不知獣畏己而走也。以為畏狐也。